多くの美容師やアシスタントが悩む手荒れ。手荒れがひどくて美容師を辞めざるを得ない人も少なくありません。特にシャンプーをよくする1、2年目のアシスタントに多く、ドクターストップがかかることも。せっかく美容師を続けたくても、手荒れが原因で夢を諦めなければいけないのはとても悲しい現状です。
そこで、美容師の手荒れ対策をまとめました。体質や環境によって効き目は変わると思いますが、色々と試して自分に合った治し方が一つでも見つかれば嬉しいです。
1)早い段階で病院に行く
少しでも痒みを感じたり、手に小さな水疱が出始めたりした時点で、極力早めに皮膚科で診てもらいましょう。悪化すると手湿疹やひび・あかぎれになったり、爪の甘皮がなくなって爪と皮膚の間が膿んだり、患部が腕や背中まで広がることもあります。悪化すればするほど、治療が長期化して体にも負担がかかる上、ひどい場合は先生もドクターストップをかけざるを得ないこともあります。
忙しいと、どうしても悪化するまで我慢してしまいがちですが、早めに皮膚科に行きましょう。病院を選ぶ際は、なるべく美容師という職業への理解がある先生がおすすめです。同じ皮膚科の先生でも、診断時にしっかり話を聞いてくれる方、アレルギー検査などを勧める方など様々です。さらに、ステロイド軟こうや飲み薬としてのステロイドや抗アレルギー剤、ステロイド注射、漢方など医師によって治療方法も異なってくることもあります。
自分に合う先生を見つけることは、手荒れを治すために重要です。美容師仲間が勧める病院に行ったり、ネットで評判の良い病院を探したりして、信頼できる先生に診てもらうことをおすすめします。
2)生活習慣を整えて、体質改善を
体質を変えて、代謝機能や免疫力を高めることも、手荒れを治す効果があります。特にもともと敏感肌だったり、アトピー性皮膚炎があった人は、手荒れになりやすい体質です。日々の生活を見直し、体質を改善することで、手荒れを予防・改善しましょう。ご紹介する運動と食事、ストレス解消方法を試して体質改善を図りましょう。
運動
筋肉が衰えて基礎代謝が低下すると、免疫力が落ちてしまいます。適度に運動して、基礎代謝を上げましょう。好きなスポーツがあれば休日に行うのがベストですが、なかなか運動するために出かけるのが難しい場合、忙しい美容師でも家で手軽にできる運動をご紹介します。
●ストレッチ
お風呂に入る前などに軽くストレッチするだけでも、血流が良くなって代謝が上がります。仕事終わりに酷使した手足を伸ばすと、気持ち良いですし体が軽くなると思います。1週間ほど続けるだけでも、体が少しずつ柔らかくなって、血流が上がるので継続して行いましょう。
●ヨガ
ヨガはゆっくり筋肉を使うことで、表面だけではなく、体の内側の筋肉(インナーマッスル)を鍛えることができるので、代謝がよくなりやすいです。また、呼吸も深くできるようになるので、酸素が体のすみずみまで行きわたり、血のめぐりが良くなります。最近はyoutubeにも初心者向けのハウツー動画が配信されているので、見よう見真似でやってみることをおすすめします。
●筋トレ
腹筋やスクワットなど一度はやったことのある簡単な筋トレをすると良いでしょう。特に腹筋やもも裏の筋肉は大きいので、鍛えることで効率よく熱をつくって、代謝の良い体になります。
食事
どうしても仕事柄、夜遅くまで働いているとインスタント食品やコンビニ弁当などに頼りがちです。しかし、これらの食品ばかり食べると、化学調味料や薬品など体に悪いものを多く摂取しているだけでなく、十分に栄養をとれなくなってしまいます。皮膚の再生に必要な栄養素をしっかり摂取することで、治りが早くなります。特に手荒れに良いと言われる栄養素をいくつかご紹介します。
●亜鉛
皮膚細胞の再生を促し、炎症を抑えたり、老化を防ぐ働きをします。特に傷ついた部位の細胞分裂を活性化させるため、昔から湿疹や火傷の塗り薬としても使われてきた栄養素です。
亜鉛は牡蠣や煮干し、豚レバー、牛肩肉、牛ひき肉、卵、チーズ、ごまに多く含まれています。特に日本人は不足しがちな栄養素と言われているので、亜鉛の多い魚介類や肉類を意識的に食べるようにしましょう。また、後述のビタミンCと一緒にとることで、吸収率が上がります。
●ビタミンB群
ビタミンBは8種類ありますが、中でもビタミンB2、B6、B12、ナイアシンが肌荒れを治すのに効果的です。これらのビタミンB群は、炎症を防いで血行を良くして、皮膚や粘膜の再生を助ける働きがあります。
ビタミンB2はレバー、チーズ、納豆、ごま、ビタミンB6はレバー、バナナ、赤ピーマン、鮭、ビタミンB12はレバー、牡蠣、すじこ、海苔、ナイアシンはレバー、たらこ、サバに多く含まれています。
●ビタミンC
よく美肌に欠かせない成分と言われていますが、傷の治りを早める働きがあります。
イチゴ、グレープフルーツ、トマト、レモン、じゃがいも、ほうれん草、小松菜などに多く含まれています。コンビニで飲み物を買う時に野菜ジュースやスムージーを選ぶと手軽に摂取できます。
●ビタミンE
ビタミンの中でも強い抗酸化作用があり、細胞膜の酸化を抑制します。また、血行を促進し、皮膚の温度を上昇させ、肌のバリア機能を高める作用があります。
たらこ、かぼちゃ、卵、うなぎ、大豆、植物油、ごま、ナッツ類などに多く含まれています。いつもの油をオリーブオイルに変えたり、おやつにナッツを選ぶと良いでしょう。
ストレス解消
ストレスを溜めると、自律神経が乱れることで、血流が悪くなり、代謝機能や免疫力も落ちてしまいます。すると、肌のターンオーバーも乱れて、皮膚のバリア機能が低下します。美容師は特に激務でストレスが溜まりやすいので、意識的に気分転換をしてストレスを発散させましょう。家でも手軽にできるストレス解消方法をご紹介します。
●良質な睡眠をとる
睡眠はストレスを軽減する大きな役割を担っています。睡眠時間が不足していたり、眠りが浅いと、脳の扁桃体が活発になり、ささいなことでも不安に感じるようになります。深い眠りにつくには、睡眠をつかさどるホルモン「メラトニン」がかかせません。朝起きて1時間以内にカーテンを開けて窓辺で数分過ごすだけで、メラトニンが生成され、夜自然に眠気を感じて、ぐっすり眠れるようになります。
●お風呂にゆっくり入る
簡単にできるストレス軽減方法は、ぬるめのお風呂にゆっくり入ること。全身の力が抜けて、血行がよくなることで、指先まで栄養が行き届いて手荒れの治りが早くなります。また、お風呂に入った後は丁寧にハンドクリームなどを塗って、皮膚のうるおいを逃さないようにしましょう。
●ストレスを軽減するツボ
「合谷(ごうこく)」のツボは、乱れた自律神経を正常に戻す働きがあります。場所は、手の甲側の親指と人差し指の延長線上に合流するところにあります。このあたりのくぼみを親指で押して、ジーンとくれば正解です。反対側の手の親指で、人差し指の骨に向かって押しましょう。合谷は「万能のツボ」とも呼ばれており、ストレス軽減以外にも頭痛や肩こり、便秘にも効きます。
3)手洗いは冷水で
健康な手の表面には皮脂膜があり、天然の保湿クリームとして手を守っています。しかし、シャンプーや薬液の影響で荒れている手は、過剰に皮脂が取れてしまい、手のバリア機能が弱まっています。お湯で手を洗うと、ただでさえ少ない皮脂を洗い流してしまうので、冬場はつらくても普段からできるだけ冷めたい水を使いましょう。
また、手を洗った後はしっかり指の間までタオルで水分を抑えましょう。手に水分が残っていると、乾く際に手表面の水分まで一緒に蒸発してしまいます。特に指の間や指のしわは水分が残りやすく、あかぎれになりやすいです。柔らかいもので丁寧にやさしく水気をふき取りましょう。
そして拭いた後は、ハンドクリームを塗ることも忘れずに。また、冷水で洗うと手が冷えるので、クリームを塗りながらマッサージして、手の血行をよくしましょう。
4)絆創膏は防水よりもフィット感
手に傷がある時に絆創膏をすると思いますが、剥がれやすくて困っている方も多いと思います。絆創膏はしっかり指にフィットするものを選ぶのがポイントです。防水の絆創膏は、どんなにいいものでも全く水分を通さないということはなく、分厚いタイプも多いので、髪の毛にひっかかってしまいます。また、傷ができやすい指先やよく動かす関節部は、どうしてもはがれやすくなってしまいます。
そこで、美容師の間で人気の絆創膏は、ケアリーブです。伸縮性に優れているので関節に貼っても指が曲げやすく、粘着力があるので水に触れてもはがれにくく、かといってかぶれることも少ないようです。また、ひと箱にたくさん入っているのも嬉しいポイントです。
5)施術を行う時はグローブを
手荒れの一番の原因となるシャンプーやカラー剤、パーマ剤に触れる時はなるべくグローブをしましょう。パーマのワインディングも慣れれば、グローブでもできるようになります。また、家で炊事する時もグローブをしましょう。
人気のグローブはこちらのハイパービューティーグローブ(ロング)。破れにくく、手首の上まであるので手首が荒れません。また、乾いた髪にもひっかかりにくく、素手に近い感覚でワインディングもできます。多くの美容師が家で洗いものする時にも使用するほど高く評価されています。
6)さらにグローブの下には布手袋を
グローブをして直接シャンプーや薬剤に触れないようにしていても、なかなか手が治らないこともあります。それは、グローブの中が湿気や汗で刺激となっているからです。そこで、最初に綿でできた布手袋をすると、汗を吸収して、蒸れを防ぐことができます。
おすすめの布手袋は、「純綿100% コットン手袋」です。薄手なので、ごわつきにくく、フィット感もあります。アマゾンでもベストセラーのコットン手袋です。
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ただ、どうしても素手とは感覚が変わってしまうので、気になる場合は傷や炎症のある部分にフィンガープロテクターをつけると良いでしょう。指先に被せるものですが、指先を切って、関節につけることもできます。
また、手袋を使った後は毎回しっかり洗いましょう。外す際に少しでも薬液が手袋についてしまと、それが手について手荒れの原因となります。
7)グローブ禁止の場合はサロンに交渉を
シャンプーやパーマをする際にグローブの着用が禁止になっているサロンもあります。とはいえ、やはり一番の手荒れ対策は、そもそも刺激物に触れないことです。
もし、話し合えそうであれば、オーナーと掛け合ってみましょう。お客様を大切にしたい気持ちはわかりますが、手袋をしていても気持ちよくシャンプーできるようになる美容師も大勢います。本当にスタッフの体や夢を大切してくれるオーナーであれば、理解してもらえるはずです。話をしても難しい場合は、別のサロンで働くことを考えても良いかもしれません。
8)どうしても無理なら洗浄と保湿を入念に
それでもグローブができない状況であれば、少しでも刺激物から手を守るために、洗浄と保湿をしっかりしましょう。
手荒れしているとお湯やシャンプーでも十分刺激になりますが、特にパーマ液や縮毛1液には注意しましょう。これらの薬液はアルカリ性なので、皮膚のタンパク質を破壊します。放置してしまうと、髪の毛と同様に皮膚も溶けてしまいます。
さらに、パーマ液や縮毛1液は手に残りやすい性質があります。パーマ液に触れた後は、入念に薬剤を洗い流しましょう。おすすめの洗い流し方は酸リンスを使うこと。パーマ液でアルカリ性に寄った髪の毛を中和させるために使う薬ですが、これを手にも使用します。パーマ液を水で洗い流した後、酸リンスを手にとって揉みこみましょう。その後、リンスを流して石鹸で手をよく洗いましょう。特に指関節のしわは残りやすいので、指を1本1本丁寧に洗いましょう。
手を洗った後はよくタオルで水気をとってから、クリームを塗りましょう。理想はシャンプーやパーマをする度にクリームをつけること。10回施術を行えば、10回つけましょう。ハンドクリームをつけてもシャンプーや薬液に触れれば、またすぐに洗い流されてしまいますが、少しでも皮膚を保護するためにこまめにハンドクリームをつけましょう。健康な皮膚ですら溶かしてしまう薬液を傷ついた手で直接つけていいはずがありません。
9)ドライヤーを使う前もしっかり保湿
手荒れがひどい人は本来刺激から守ってくれるはずの皮膚表面の油分や水分が少ないため、バリア機能が低下しています。そんな無防備な状態でドライヤーの風に当たると、ますます水分が失われ、刺激をダイレクトに受けることで、手荒れがさらに悪化します。
そのため、ブローする前後は極力こまめにハンドクリームを塗って、熱風による乾燥から手を保護しましょう。特に忙しい時間はこまめにクリームを塗るのは大変かもしれませんが、ポケットや道具入れに小さいハンドクリームを入れておくか作業スペースに置いておくと、スキができた時にサッと塗れるのでおすすめです。特に症状がひどい時は、面倒でも一人ブローしたら、その度に塗りましょう。ハンドクリームが失われている皮脂の代わりとなって、手に被膜を作ってドライヤーの熱風から守ってくれます。
10)保湿だけではなく、保水の習慣を
ハンドクリームや病院で処方されたヒルドイド、ビーソフテンなどの保湿剤で、手荒れをケアする方が多いと思います。しかし、実は保湿するだけでは、皮膚の表面を保護しているだけで、肌の奥は乾いたままです。そのため、保湿だけでは根本的な乾燥やかゆみ、炎症の治療にはなりません。
詳しくはこちらの記事「かゆい乾燥肌の原因とすぐできる対策方法」をご覧ください。
顔に化粧水をつけるのと同じように、手にも化粧水で「保水」することで、まずは乾いた皮膚の水分を補いましょう。朝晩は化粧水をつけて保水してから保湿しましょう。さらに寝る前はたっぷり保水・保湿した後にガーゼや綿手袋をして保護するとさらに効果的です。手がラップのような役割をして手の潤いを保ちやすく、湿疹や痒みの治りを早める効果が期待できます。さらに、寝てる最中に無意識的に手を掻いてしまうことを防ぐことができます。なお、勤務中は保水が難しければクリームをできるだけこまめに塗って、傷がある場合はその上に絆創膏をつけましょう。
おすすめの化粧水は「メルシーケア」です。粒子の非常に細かい水が使われているため、肌の奥までしっかり浸透します。さらに、もともと傷や火傷を治すために使われているカレンデュラという薬用ハーブが、傷ついた皮膚を修復してくれます。もともとはアトピー持ちの赤ちゃん向けの化粧水ですが、手荒れ治ると美容師の間で話題の化粧水です。
11)日頃から手荒れ予防を
手荒れが落ち着いて薬を手放しても、保水と保湿は毎日続けましょう。日頃から丁寧なスキンケアで、発症させない・悪化させないことが一番です。面倒ですが、症状がひどくなってから治す方がよほどつらく、時間もかかってしまいます。面倒だと思った時は、一番ひどかった時、そしてそれを治すのにかけた苦労を思い出してしっかりケアしましょう。手荒れは一度治っても、ふとしたことで繰り返し発症します。
かゆくて痛くてつらい、美容師の職業病とも言われる手荒れ。ご紹介した治し方で手荒れが良くなり、みなさんの美容師ライフにこの記事が少しでもお役に立てば嬉しいです。
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