ステロイドの副作用と塗り方

赤ちゃんの肌に湿疹ができたり、かぶれてきたりして、病院に行くとステロイドを処方されることがあります。副作用が心配なステロイドを赤ちゃんに塗っても良いのでしょうか?ステロイドの副作用や塗り方、注意事項をご紹介します。

1. ステロイドとは


ステロイドは副腎皮質ホルモンが入った抗炎症作用や免疫抑制作用のあるお薬です。皮膚に塗る外用薬だけでなく、粉末を吸入する吸入剤や、筋肉に注射する注射剤としても利用されています。

皮膚に塗ると、炎症を抑える作用が非常に強いため、すぐに赤みが落ち着いて、かゆみを抑えられます。炎症があるとかゆいので、ひっかいてしまい、炎症がさらにひどくなるという悪循環に陥ってしまうので、ステロイドで鎮静化することが一般的です。

ステロイドホルモンは、好酸球やリンパ球、炎症反応に関係するサイトカインの働きを抑制する作用があります。そのため、炎症を抑える力は強力で、乳児湿疹アトピー性皮膚炎、軽いやけどなどにも使用されます。

 

2. ステロイドの種類

ステロイド剤は5段階の強さに分かれています。症状に合った強さの薬を使い、良くなってくると弱いクラスに下げていきます。

副作用が現れやすい赤ちゃんや幼児には、通常3段階目のStrongより弱いステロイド剤が使われます。ただし、ステロイドをワセリンと混ぜて使う場合はVery StrongやStrongestを処方されることもあります。

Ⅰ群 Strongest(最も強い)

Very Strongでも十分な効果が得られない場合に使用されます。

■安全性の目安
大人:4週間以内・1日5g以下
子供:2週間以内・1日2g以下
乳幼児:使わない

■代表的な薬
デルモベート軟膏

ダイアコートクリーム

Ⅱ群 Very Strong(とても強い)

ひどいかぶれ、炎症、やけどの初期などの重症時に最初に使用されます。

■安全性の目安
大人:6週間以内・1日10g以下
子供:3週間以内・1日5g以下
乳幼児:使わない

■代表的な薬
フルメタ軟膏

マイザー軟膏

トプシム軟膏

Ⅲ群 Strong(強い)

中症時に最初に使用されます。リンデロンVGは日本で最も良く使われるステロイドの一つです。

■安全性の目安
大人:8週間以内・1日20g以下
子供:4週間以内・1日7g以下
乳幼児:1週間以内・1日2g以下

■代表的な薬
ボアラ軟膏

リンデロンVG軟膏

ベトネベート軟膏

フルコート軟膏

Ⅳ群 Mild(中程度)

大人・子供ともに、顔を含めた全身に使用されます。

■代表的な薬

アルメタ軟膏

ロコイド軟膏

キンダベート軟膏

Ⅴ群Weak(弱い)

薬を最も吸収しやすいお尻や陰部にも使用されます。

■代表的な薬
オイラゾンD軟膏

オイラックスHクリーム

※引用元 ベネッセコーポレーション(2010)「最新赤ちゃん・子どものアトピー&アレルギー大百科」p.65

 

3. ステロイドの副作用


ステロイド剤は一時的に炎症を抑えるのに効果的ですが、ステロイドを処方する医師も長期間使い続けるものではないと認識しています。ステロイドを長期間使い続けると、下記の副作用や影響があります。

1) 皮膚が薄くなる(皮膚の委縮)

子どもや高齢者に出やすいといわれる副作用です。皮膚の薄い顔や足の付け根に現れやすく、皮膚の厚い手のひらや足の裏などには表れにくい傾向があります。

ステロイドは、皮膚の炎症を起こす細胞に働きを抑えて湿疹を治しますが、炎症に関係のない細胞までおさえてしまいます。その中には、肌の奥の真皮にある弾力やうるおいを保つのに重要な細胞も含まれているため、皮膚が薄くなってしまいます。

また、皮膚萎縮線条という妊娠線のような症状が出ることもあり、一度できてしまうと跡が残ってしまうので気をつけましょう。

2) 毛細血管が浮き上がって赤く見える

炎症によって拡張した毛細血管が、ステロイドを使うことで収縮します。しかし、ステロイドによって毛細血管が縮んだ状態が続くと、体はより毛細血管を広げようと、以前にも増して毛細血管が拡張する副作用が起きます。

ステロイドの使用を辞めても、拡張が治まるのには1年以上かかる場合があります。

3) 肌が白くなる

ステロイドを使い続けると黒くなるとよく言われていますが、それは誤解です。黒くなるのは、ステロイドそのものではなく、炎症が続いたり、繰り返したりすることで、色素沈着するため、起きる現象で「炎症後色素沈着」と呼ばれています。

通常、皮膚の表皮にたくさんあるメラニンという色素が、炎症やひっかくことで表皮が壊れて、深部の真皮にたどり着いてしまいます。メラニンが真皮内にたどり着くと、その場所に色素が沈着して黒くなります。

つまり、黒くなるのはステロイドと無関係ですが、ステロイドを使うことで赤みが引くと、黒い皮膚が目立つため、勘違いされやすいようです。やけどの跡と同じように、自然に消えるまでには長期間かかります。

正しいステロイドの副作用としては、むしろ肌の色素が抜けて白くなります。「色素脱失」と呼ばれる症状で、肌の色を作り出す働きが抑制され、メラニン色素が少なくなることで白くなります。強いステロイドを長期間使用すると発症しますが、使用をやめると白くなった肌が徐々に元の色に回復します。

4) ニキビができる

ステロイドによって免疫が抑えられると、皮膚のアクネ菌が増殖しやすくなるため、ニキビができやすくなります。

5) 髪の毛や体毛が濃くなる

体毛が通常より濃くなったり、多く生えたりします。特に子供に多い副作用です。

6) 細菌やウィルス感染しやすくなる

ステロイドが免疫を抑制することにより、細菌やウィルスに対する抵抗力も落ちてきます。水虫やカンジダなどのカビがつきやすくなったり、とびひなどの感染症にかかりやすくなります。

7) 全身副作用

飲み薬や注射でステロイドを使用した場合、副腎皮質機能の抑制、成長阻害、糖尿病などの全身副作用見られますが、皮膚から吸収されるステロイドは少量なので、全身副作用が現れる人は、ごく稀といわれています。

 

4. ステロイドの塗り方


ステロイドは副作用が心配だからと言って、使用量が少ないなど、誤った使い方をすると効果を発揮できず、逆に長期間しようすることにもなりかねないので、正しく使いましょう。

1) 塗る前に手を洗い、手をふきます。

※水分が残っていると、チューブの中に細菌が増殖しやすくなるので、しっかり水分をとりましょう。

2) 赤ちゃんの皮膚が清潔な状態で、保湿剤を塗ります。

ステロイドを塗った後に保湿剤を重ねると、ステロイドが広がり、副作用の範囲も広がるので、先に保湿剤を塗りましょう。

3) 上から患部にステロイドをのせるようにやさしく塗ります。

使用量・回数は、先生の指示に従って塗りましょう。一般的には塗ったあとにティッシュがくっつくくらいの量を、1日1~2回塗るよう指示されることが多いようです。

4) 塗った後も手を洗い、副作用を予防しましょう。

ステロイドが付いた手で、そのまま体に触れないようにきちんと洗い流します。

 

5. 長期間の使用を避けるには


長い間、強いステロイドを使い続けると、副作用が起きるリスクが高まるので、なるべく短期間の使用で済むように気をつけましょう。

皮膚の状態を良く見る

ステロイドを3,4日正しく使えば、ほとんどの場合、皮膚の状態が良くなっているはずです。炎症が抑えられて、症状が落ち着いてきたら先生の指示に従って、ヒルドイドビーソフテンなどの保湿剤に切り替えていきましょう。

数日経過してもよくなっていない場合は、ステロイド剤の強さや塗り方、塗る量が合っていない可能性があります。ステロイドではなく、抗菌薬が必要な細菌やカビが皮膚に感染している場合もあるので、よくならない場合は早めに病院に行って、診てもらいましょう。

アレルゲンを取り除く

アレルギーで湿疹を起こしている場合は、一時的にステロイドで炎症を抑えても、アレルゲンが侵入してくるとまた症状が出てきてしまいます。そのため、薬だけではなく、アレルギーを引き起こしている原因となっているアレルゲンの除去が必要です。

 

6. それでも副作用が心配なら、市販のスキンケアを


ステロイドを避けるために、市販の塗り薬を塗っている方も多いですが、実は市販薬にもステロイドが入っていることがあります。成分を見ても、「ステロイド」とは書かれていないので、見分けることが難しいですが、こちらのドラッグストアでも手に入る軟膏はステロイド薬です。
・オイラックス PZ軟膏
・メディクイック軟膏
・ムヒアルファEX
・フルコートF
・ロコイダン軟膏
・セロナ軟膏

市販のスキンケアであれば副作用の心配が少ないです。症状がよくなってきた場合は口コミなどで評価の高いスキンケアを選んで試してみると良いでしょう。

 

7. 傷の修復作用がある薬用ハーブ「カレンデュラ」


最近は、高い抗炎症採用やかゆみを抑える効果があり、副作用の心配が少ない薬用ハーブ「カレンデュラ(和名:トウキンセンカ)」が注目されています。古代ローマ時代から兵士の傷を癒したり、やけどのケアにも使われてきた伝統的なハーブです。日本でも出産時の会陰切開のケアによく使われています。

ステロイドを子供や自分に使いたくて、カレンデュラ入りのオイルやローションを使っている方が多数いるので、一度試してみると良いでしょう。中でも人気のカレンデュラ入りスキンケアをご紹介します。

1) メルシーケア薬用カレンデュラ

赤ちゃん用のスキンケアですが、手荒れに悩む美容師の間で「ステロイドを使わなくてもひどい手荒れが治った」と今話題の商品です。カレンデュラが通常のスキンケアの10倍以上含まれているため、カレンデュラの効果をしっかりと感じられます。

 

2) ヴェレダ カレンドラ ベビーオイル

助産師と共同開発した製品で、多くの助産師に選ばれています。また保湿だけではなく、滑りが良いことからマッサージや赤ちゃんのおしりの汚れ落としなど、多目的に使われています。また、香りの良さも人気の理由の一つです。

 

3) キールズ エッセンス ジェルマスク

2017年4月に発売されたばかりのジェルマスクです。手摘みのカレンデュラの花びらが入っている贅沢なマスクです。つけてから5分ほど置いて洗い流すと、肌の調子が良くなると評判です。

湿疹やアトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルは症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返すことも多いです。しかし、ステロイドを長期間使用し続けてしまうと、様々な副作用が現れます。先生と相談しながら、状態に合わせて副作用の心配がないスキンケアで、毎日ケアして健やかな肌状態を目指しましょう。

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